2009-03-08

J2開幕戦

コンサドーレ札幌 VS ベガルタ仙台

(札幌ドーム)

分析・文責

俊一朗

今日、玄さんと永光さんと一緒にコンサドーレの開幕戦を見てきました。濱本さんも会場にいたようです。

 せっかくコラムコーナーを作ってもらったのに、去年は1回しか載せることが出来ませんでした。今年は見た試合について、なるべく思ったことを書くようにしたいと思います。

 それでは、玄さんに奢ってもらったビールでほろ酔い気分ですけど、ちょっとの間だけお付き合いください。

 今年もJリーグが開幕した。今日の札幌ドームには、約500人の仙台サポーターを含め、2万人を超えるファンが集まった。スタジアムはいい雰囲気だ。

やはり開幕戦は面白い。どんなサッカーをしたいのかという“理想”とそれをさせまいとする相手の前に浮かび上がる“現実”のせめぎあい。

石崎新監督の下、最短でのJ1復帰をめざすコンサドーレは、ホームでの開幕戦を勝利で飾りたいところだ。

攻めるコンサ

立ち上がりは完全に札幌ペース。試合開始から15分の間に、立て続けに3本も決定的なチャンスが訪れた。昨シーズンの終盤からスタメンに定着し、今期は主将にも任命された期待のMF上里。彼が中盤の底でゲームを作る。ここで面白いのは、左利きの彼が右ボランチの位置にいたということ。こうすることで上里はピッチ全体を見渡すことができ、右にも左にもいいフィードを供給していた。そして去年までは中盤でゲームメークを担っていたクライトンを、今期は最前線に。彼の守備面の負担を軽減し、前で起点を作りたいという監督の意図が伺える。序盤、札幌は上里にボール運びをさせクライトンが決定的なパスを出す形が機能。守備面でも前線からの追い込みで仙台のボール回しを破壊し、この試合の主導権を握った。

仙台の対応

しかし前半も20分を過ぎてくると、札幌の攻撃は停滞しだす。依然として札幌の高い位置からのプレスに苦しむ仙台MF陣だが、自慢のポゼッションサッカーを封印し、DFのエリゼウを起点としたロングボールを攻めの中心に。彼はフィードの精度が高く、危なっかしいところも含めてバルセロナのマルケスのような選手だ。とにかく彼が裏へのボールを執拗に放り込むことで札幌のDFラインは下げさせられ、中盤の高い位置でボールを奪うことができなくなる。こういった展開では、札幌がどうやって自陣から攻撃を組み立ててくるのが鍵となるだろう。

両刃の剣、クライトン

“一人で何とかしてくれる男”ダヴィを失った今年の札幌。地道にパスをつないでいくサッカーに切り替えてきた。J2の中では高い技術を持つ選手が多く、上里のサイドチェンジでアクセントをつけることもできる。長い目で見れば、この選択は正しいのではないか。しかし、前線の選手には物足りなさを感じる。ダヴィの後釜であるキリノはチームのために汗をかける選手だが、決して器用な選手ではなく、得点の量産は難しいだろう。左サイドの岡本はボールに絡む回数が少なく、右を担当した石井はMFが本職ではない。彼は上里のロングフィードをトラップすることができずに、何度もチャンスを潰していた。そして最大の問題点がクライトンだ。彼はあまりにも自由すぎる。事実、この試合で彼が輝いたのは前半の15分間だけだった。おそらく彼に戦術的な指示は一切与えられていない。彼は気ままに前線をさまよい、足元にボールを要求し続けた。確かに足元の技術はすばらしく、J2の試合で彼が簡単にボールを失うことはない。それでも、彼が効果的なプレーをする、クレバーな選手だとは言いがたい。人のためにスペースを作ったり、自分が囮になる動きができないからだ。それがこれだけのテクニックを持った選手が、未だにこのレベルでプレーしている要因なのだろう。それでもクライトンが必要な選手であることは間違いない。前線で“タメ”を作り、攻撃にアクセントをつけられる選手が、今の札幌には彼の他には見当たらない。今後シーズンが進むにつれ彼に対するマークはどんどん厳しくなるはずだ。それを踏まえてクライトン自身がプレースタイルを修正し、チームとしても彼をデコイとした攻撃の形を模索する必要がある。もしクライトンが今日のような利己的なプレーに終止し、チームがそれを許してしまったら、札幌は昇格はおろか、中位を彷徨い続けるシーズンを送ることにもなりかねない。

停滞する試合

結局その後は両チームとも決定機は作れず、0−0のまま前半は終了する。札幌としては立ち上がりの攻勢の中で、先制点が欲しかったところだ。逆に仙台としては、序盤を耐え、偶発的とはいえCKからポストに当たるシュートを放つなど、まずまずの前半だったと言えるだろう。仙台がこのままリスクを犯さずにアウェーで手堅く勝点1を取りに来るのか、それとも勝ちにくるのか。それが後半のポイントとなる。

してやったりのベガルタ

結論から言ってしまうと、仙台はリスクを犯さないサッカーを展開し、勝点3を持って帰ることに成功する。決勝点は後半の30分、梁のFKを菅井が合わせたものだった。それ以外に仙台が作った決定機は、中盤のパスワークから中島が抜け出した一本のみ。なんとも効率の良い勝ち方だが、チームの今後を占う開幕戦として、決して満足のいく内容とは言えなかった。

つなげないボランチ

あくまで仙台が目指すのはポゼッション、つまり人もボールも動くサッカーだ。まさに昨シーズンの札幌がしたような、DFから一発のパスであとはFW頼みというような戦術ではない。ボールを“つなぐ”ためには、MFの選手にそれ相応の技術が求められる。だが今日の仙台の問題点はまさにその中盤、特に低い位置でボールを受けるボランチの選手にあった。仙台のダブル・ボランチの斉藤と千葉は、どちらかというと守備的な特長を持った選手たちだ。彼らのテクニックは並である。札幌が序盤から激しくプレスをかけてきたこともあり、まったくボールを前に運べなかった。その結果パスワークの中心となる梁までボールが渡らず、仙台の攻撃は停滞した。右サイドで起用された関口の突破には可能性を感じたが、味方のサポートがない状態では厳しい。前線の中島や平瀬といった選手たちも、味方との連携の中で力を発揮するタイプだろう。やはり仙台の攻撃の鍵は中盤が機能するかどうかにかかっているのだ。だからこそ両ボランチの出来には不安が残る。特に千葉は危険な場面でボールを失うことが多く、徐々にボールに触る回数も少なくなるという悪循環に陥っていた。あくまでも仙台がポゼッションサッカーにこだわるのであれば、手倉森監督はボランチの人選を再考すべきだろう。

51試合という長丁場

 札幌はホームでの開幕戦を白星で飾れなかった。しかし3回戦総当りで年間51試合もの試合を行うJ2のレギュレーションを考えれば、この時期に大事なのは結果よりも内容だ。開幕して10試合までの間に攻守の雛形を作ることが出来れば上出来。いち早く守備組織を整備し、攻撃の形を確立する。アウェーでの勝点3という最高の形でスタートを切った仙台も、これが出来て初めてスタートダッシュに成功したと言えるだろう。

 両チームとも十分J1昇格を狙うことが出来る戦力を有しているだけに、今後の活躍を期待したい。

<この項、了>

inserted by FC2 system